[肩に預けられたその頭をすりと擦り寄らせながら吐かれた言葉>>246に、男は小さく息を詰める。だけれど、すぐさまふ、と息を吐いたのなら、眼前に見える彼の耳に向けて、言葉を注ごうとはしただろうか。]
喜んで貰えたのなら光栄だ。
喜んだ時の君の反応を見るのは嫌いじゃあない。
…だが。
かく言う君も、君の"台詞"が何れだけ俺を喜ばせたか…俺を魅せたか。
気付いてはいないだろう?
[彼だけでは無いのだと。そう伝えるような言葉は、果たしてどう受け取られはしただろうか。覚えた安堵を逃がさぬようにと少しだけ力の篭る腕に、小さく苦笑しながら息を吐く。
小さく広がる怯えにも似た思いを、彼が感じ取っているなど。男には知る由もなかったけれど。]
………、
[彼の名を呼ぶ声は、思いの外悲痛じみてしまって。その事に舌を打ちそうになるのを堪えていれば、腕の中でビクリと震える身体>>247を感じる。
そうして再び落とされた言葉に、答えられぬのが何とも歯痒い。嗚呼、何と歯痒い事か。
もしもこの時計の針が狂うたので無いのなら――必ずや、望む言葉を返してみせただろうに。]
(295) 2014/10/06(Mon) 14時頃