[帰宅して最初にしたのは、弟と膝を突き合わせて話すことだった。
幼い頃に両親を亡くし、二人で生きてきた。
知識人だった両親はこの家を含めて結構な資産を残してくれたし、その両親の生前から資産運用を任されていた管財人は実に優秀だったから、金銭面であまり苦労しなかったのは幸運だろう]
トレイル、あのね。
色々、話したいことがあるの。
[今までのような、お遊びめいた学生運動じゃなくて……本物の革命組織に志願するつもりでいること。
悪魔族の男性を好きになったこと。
禁忌を犯したこと……。
必然的に学校は辞めることになるし、この家にも帰れなくなる。
弟は当然反対しただろう。しかし自分が絶対に意志を曲げないことも、よく知っているはずだ。
何しろ、二人で生きてきたのだから。
午前中いっぱいをかけて弟を説得する。
数日以内に必ず訪れる別れに、弟は泣いてくれただろうか*]
(293) 2014/12/09(Tue) 23時頃