─回想・噴水広場─
[ヤニクがその場を去った後も、しばらく動けないでいた。
押し付けられた新たな包みを膝の上に置いたまま、仕入れた情報の内容について思考を巡らす。
アンゼルバイヤのワット王が、アウストに対して強攻策を取り残虐だという話はにわかに信じられなかった。
少なくとも自国民からは仁君と慕われ、王宮は開かれている。市井の人であるサイラスも、つい先日目通りがかなった上、服を賜ったばかりだという。その人物像とだいぶ食い違う。
国内に居るだけでは、周囲の国の実情は伝わってこない。
ただ、ローズマリーはアウストからアンゼルバイヤに逃れてきた。
アウスト人がアンゼルバイヤに恨みがあるならば、わざわざこの国へ逃れようとするだろうか]
うさんくさいな…。
[やはり信じられない。だが、確証は得られない。
サイラスが信念を持ち意思を貫くなら協力するしかないが、サイラス自身ともっと対話を重ねるべきだろうか…?
だが、あの決意は揺るぎそうになかった。
薬屋で対話した時は、既に何度も逡巡した後の意思の強さを感じたから、…だから自分は彼に加担する。彼を死なせたくないがために]
(292) 2011/11/13(Sun) 23時頃