[>>263植物を育てたこともないジェレミは、「そうだね、そういう感じ」と音を合わせて、至って気軽に嘯きもする。]
熟成を、――というより
これは、そうだな、醸成の認識。かな。
いままさに創りあげている、とき。
[「彼女」の髪に絡ませていた指先が滑り落ち、真白い衣服の胸元へ伸びる。爪先がかかり、一拍遅れて赤が滲みだせば、どろりと濁るような、腐りかけの、ような、甘さの乗る匂いが、そこにある。果物ばかりを胃に詰め込ませた肉袋の匂いだ。
物質的な“醸成”以外この食卓で零れ出はしない。
ジェレミは軽く頬杖をついて、好まし気に、年若い彼を眺めている。いたって現代的な装いの彼に、過るものを、掬い上げんと。
――そんなものは、やはりヴェールの向こう。
このテーブルクロスの向こう側になにを見ようと、ジェレミが言葉にすることはない、けれど、]
(292) 2018/11/04(Sun) 20時半頃