――午前・本屋前――
[僅かに俯くように彼が顎を引けば、一層鳶色はかかる前髪に陰を落とす。鹿角がこちらへ傾くのを、緩く視界の端に映しつつ。先端から根元までを追い、――自分には無いそれに、微かに目を細めて。
相手の胸中へ落ちた声>>254は聞く事もなければ、ただ落とされる問い(>>204)には問いを重ねた。
伏せられた鳶色から溢れるものを見れば、やはり目元が緩むのは堪え切れないまま*]
――、へえ。
[ “分からない”、と返されたのには緩い視界を更に、傾げた。覚えを含んだ目の前の友人に、見慣れない両角に。添えるようなそれを手向ければ、手頸を掴んだままのそこへ目を移す。
次いだ、途切れては矯正を繰り返す言葉には眉を寄せながら。
――腕に微かに力が篭ったのには、丁度手を放した相手には気付かれていただろうか。これ以上は、と冷めた声が遠くで嘯いては、蚕が首を擡げる。
下ろされるままになれば、それは友人の頬へと一度向けられ、――やがて静かに落ちかけて。]
(291) 2014/10/08(Wed) 22時半頃