― 図書館 ―
[読書はまずは、我慢しながら読むことからはじまった。
分厚い本と格闘して、黙々と読み続けて、視界になにやら白いものが見えて顔を上げた。
愛海先輩にずずいと差し出されたルーズリーフ。
本の読んでいるページが丁度年貢がどうだ米がどうだで完全に農家のひと可哀想気分になっていたあたしは、頭が切り替わらないままそれを見た。
伝承、とある。1、2、3、4、5、と項目を目で追う。
全て『死』がどうこうという話だった。]
え………
[あたしも根岸とだいたい同じ感想だった。元々この調べ物は『現状』を調べるためにはじまった。呪いだとか、人身御供だとか、心中だとか。]
…………
[何もいえなかった。
だって既に今の状況は『常識』の範囲を超えていたから。
顔がこわばっている。あたしは口をおさえた。青ざめていたかもしれない。]
(288) 2019/09/05(Thu) 23時半頃