[流石は舞台俳優、と言うべきだろうか。
芝居のかかった優雅な所作で此方を振り返る彼>>244には、僅かながらに感心を覚える。
――だけれど。
此方を振り返った彼から出た言葉は、何処か不機嫌そうな突き放したような言葉。
その事には少々、男の目も不機嫌に細まりはしただろう。しかし先に不躾に声を掛けたのは此方だ、と相手には分からない程度に止めはしただろうか。]
……あぁ、やっぱり。
何処かで見た顔だと思えば…何度か舞台の上で演じて居るのを見たことがある。
[手で口元を押さえる彼の顔を確認し、男は自分の考えが正しかった事を確信する。
記憶の中の彼の印象よりも幾分か低い位置から見上げてくる彼の瞳を、なるべく失礼の無いように見下ろしながら。
彼のその口振りは、男にとってあまり気分の良い物では無かったけれど。
しかし彼がそうして気まずそうに口を押さえて見せたのなら、ほんの少しだけ気も削がれたのだろう。男は口元だけの愛想の良い笑みを浮かべて見せた。]
(287) 2014/10/02(Thu) 13時頃