[返って来た言葉に、くすんだ銀灰の瞳を大きく見開いて振り返る。
熱の籠った視線で見詰め返す。捧げられた言葉の意味を理解するのに数秒かかる。その間は静止している。]
……ディーン
ありがと、う。
[僅かに眉根が揺れるのは、逆に自分が識られると言う事への戸惑い。足を踏み出すと言う事は、ラルフが今まで避けてきた自身とも出会うのではと言う恐怖。
けれども、じわりと広がる感情──喜びは大きくて。柔らかなものが解けほころぶような、普段のラルフがおおよそ浮かべない無防備な笑みをディーンに向けた。
はにかむような表情で、ディーンの荷物を運ぶ。
プールの二人と遭遇する事があったならば、寧ろ、楽しそうだね、と笑ったラルフの晴れやかな表情が、下級生達には違和感を与えたかもしれない。]
(278) 2010/09/05(Sun) 03時頃