[そうして目の前のチェシャ猫が、自分に向けて僅かに落胆して見せた>>262のなら。
取られた掌は好きにさせておきつつも、肩を竦めて困ったように嘆息を漏らす。]
確かに、君の言う通り。私も"アリス"は小さな少女だと思っていたが、どうやらそうじゃあないらしい。
"時計ウサギ"は、急いでいなかった。
その上"アリス"はこんなオジサンだ――酷い配役じゃあないか。この世界は、正しくイカれているようだ。
――……そして"チェシャ猫"は。
どうイカれているのかな?
[彼の最後の質問――自分の名については、今は敢えて答えないままに。そうして男の家を見る視線に気付いたのだろう、"チェシャ猫"はご丁寧にも、あの家に行かずに済む理由>>263を作り上げてくれた。
その事には、心の底から感謝しつつ――あの五月蝿そうな家に行かずに済むと思ったのなら、自然と心が軽くなるというものだ――分かれ道でゆらりと揺れる尻尾に目を細め。
指し示される道の先を一瞥し、小さく呻きを漏らしたのなら腕を組み、再び視線は"チェシャ猫"の方へ。]
(271) 2015/06/19(Fri) 19時頃