[部屋にあった大きな鏡を見つけたときは、
アルヤスの言葉を思い出し、まっすぐに立てた人差し指を
鏡の向こうの自分の眉間に突き刺してみたけれど。
幸か不幸か”向こう側”に吸い込まれることもなく、鏡にまあるい指紋の痕が残っただけだった。]
やっぱし伝令ァ 走るっきゃーないのかなあ。
[目がくるくるまわるほど走りたくはないんだけれど。
(そりゃあ、それなりにすばしこい自信はあるけど)
(僕のはそーゆーのとは違うんだってば)
そう、ひとりごちながら 僕はまるで準備運動でもするみたいに自慢の足を伸ばし始める。]
よっ、 と!
[掛け声と共に、ブーツの底が踏むのは鏡の部屋の窓縁。
(つまりは2階!)
丸い尻尾を立たせた兎は ぴょぉん、と 碁盤の目で区切られた世界へ走りだす。
「誰か」や「何か」にぶつかれば、その足を止めるだろう**]
(268) 2015/06/19(Fri) 17時半頃