「――…あたたかい」
僕はカップに口付け、こくりと液を喉に通しました。じんわり広がる温かみは冷えた体を暖めてくれる。美味しいと、そう感じる前に感じたことを僕は素直に吐露しました。そして緩む涙腺には、ハッと慌てて眼鏡の下を拭う。ぼろぼろ、止まらないそれは如何してだろうか。
ちりんと、続いて客が来た音を聴く。
僕は彼の言葉に優しさに>>188こくりと静かに頷いて、頭に置かれた手を甘受しては、その暖かさに殊更溢れる涙雨につらいと鼻を啜りました。
「…喉、痛い」
ひくりひくりとしゃくりあげた為か、鈍い痛みを発する喉に眉間に皺を寄せました。そしてその痛みを抑える為に、もう一度温かな其れを頂きます。今度はぼろぼろ泣くことはないけど、やはりその温かみに僕は安堵の息を洩らした。
からん。誰かが出て行った音にはちらり其方へ視線を向ける。
見れば彼が扉に何かをしていて>>228、何をし終えたのか僕の方へとまた戻って来る。その顔に悪戯な笑みが浮かべられているのを確認すれば、僕は申し訳なさと共に「ふたり」の部屋に、碧ではなく色とりどりの花々に囲まれる部屋には、安心に拍車を掛けました。
(267) 2014/10/06(Mon) 10時半頃