[さて、さて。
以上は引き取った居候の話。
実の娘らしい百洲の日向に対しては、その後も己が血縁者と明かす事は一体無く、
それでも日に日に成長していく彼女の姿へ自分なりの静かな祝福を送って居た。
中学校の入学式もこっそり見に行ったものの気付かれているかまではどうでもよく、
結局、セーラー服姿の本人に声をかける事はせず写真を取る事も無く。招かれざる不審者はさっさと退散させていただこうと、それでもネクタイをゆるめながらの帰路は随分と幸せに満ちて居たか。
彼女の身長が伸びても、纏う服が違ってきても、話す言葉や内容が変化してきても、
二人の関係変わらぬ物と、向かい合う喫茶店のテーブルで頼む物はいつもと同じ。
仕上げる報告書も無いのに事細かく日々の話を聞き、相槌と共に小さく笑い返すのは、やはり、何時ぞや見せた父の顔であっただろう。*]
(266) mzsn 2015/09/25(Fri) 21時頃