―花屋Lamo―
虚ろに視界に映る花屋を見ていた時でした。奥から僅少ばたばたと片付けのような音が耳に届いて、ゆうるりそちらへ視線を向けました。向けた先にはいつぞやの、そして僕に声を掛けてくれた花屋の店員の姿。呼ばれる声>>184が耳に届けば、ひとつひとつ、尾鰭の邪魔な足で其方へ歩きます。
外からはぽつりぽつり、雨の音が聴こえてくる。
「……」
まるで体重をそのまま下ろしたように僕は椅子へ腰掛けました。その様は崩れ落ちたと譬喩されることもあるかもしれない。俯き加減にぼうっとしていると、その視界の中で咲く茶の花。僕は少しだけ瞳に光を差し込んで、店員の彼を見上げた。
「…あり、がとう…ございます…」
掠めた声は彼に届いただろうか。目前に斜めに腰掛けた彼>>187は、ふうふうと茶の先に息を吹きかけていました。「…猫舌、なんですか」余談とばかりに、曇った心を晴れさせる為に僕は問いを投げます。ゆらゆら揺れる花は、まるで波に揺られる花のようだと碧の世界を連想することも、あったけど。
(266) 2014/10/06(Mon) 10時半頃