わからないなにか。
[冗談を否定するでもない、返事の一部を繰り返す。
――小学校の頃、
青年は、友達は少なくないが目立つ方ではない、大人しくていつも本ばかり読んでいる、似た齢の中では物知りとそやされるような、そんな子供だった。音楽に関しては、興味を持ったのは中学からで、その頃は流行歌も他より知らない位だった、けれど。
本に関して、知識に関しては、その頃から然程趣味は変わっていない。 だから、]
オカルト、好きなんだ?
[疑問形に疑問形で重ねた問いも、当時、いつか、口にしたそれと同じものだった。声の高低ばかりは随分違えど、調子も似て。
『紫鏡の話って、知ってる?』
『――は、いると思う? 幽霊、ってさ』
『この小説、怖くて、面白いんだよ』
そんな色々を、教室の片隅の少女に話していた、
古い記憶は青年の頭にこの瞬間は浮かばずも]
(262) 2016/09/28(Wed) 23時半頃