―夕方のこうぼう>>258―
[ヴェスパタインの視線に僅かにたじろぎ。
流れるように――すくなくともテッドにとってはそう聞こえる口調で祭の矛盾を指摘されれば、うぐ、とだまり込むことしかできない。
それでもなんとか、反論しようと鈍い頭を回転させる]
で、でも、ほら……えっと、大きな戦争とかもなかったし。
獣の被害とかはちょっとはあったけど、それはどこにでもあるものだし。
だから儀式を行う理由が、なく……て……
[そう、今迄聞かされていた理由はない。なのにソフィアは死んで。
村長の死も不審な噂話ばかり。
ヴェスパタインの声に、言葉に惑わされるように途中で言葉が途切れる。
そもそも難しい話が苦手で、村の昔話だって話半分に、じーさまばーさまたちが言っているからそうなんだろう、程度の信じ方をしていた若者には、ヴェスパタインの話を疑う根拠など――ただ、村の皆を信じたい、という理由だけしかなくて。
そこに憫れみの視線などを向けられて、いかにも騙されているのだと告げられれば揺れてしまうのも仕方がなかった]
(260) 2010/08/03(Tue) 21時頃