「こ、の傘は…その、肌が弱くて」
続けられた言葉>>174にはしどろもどろに、どうせ見えない視線を横に逸らしながら答えました。
肌が痛いから、まるで干からびる魚のように痛いから、なんて―僕は絶対に言えない。言ったら、誰かに聞かれたら…ましてや「科学者」に聞かれたら、どうなってしまうのか!僕は少し唇を噛むと、すぐに俯きがちに微笑みました。
渡されたヘルメットには、どくりと心臓が波打ちました。閉じ込められる感覚はどうも好きではなく、…しかし好意を無下にするわけにもいかないと、「お借りしますね」と、恐る恐る頭にそれを落としました。
まるで吐息を洩らしたら、それが泡になって溶けていきそうな視界。少しだけ泣きそうになりながら、僕は手に持った傘を横にかけさせて貰っては、きっと前に座っただろう彼女の肩に手を置きました。**
(257) 2014/10/04(Sat) 05時頃