─サイラスの部屋─
[友人の部屋に入り、デスクにランプを置いて手紙をもう一度取り出す。
墓場で読んだ文面をもう一度追い、改めて確認した内容に思わず苦笑が漏れる]
…ったくバッカだな、あいつ…薬屋を本屋に継がせるつもりかよ…。
[生前と変わらぬ論調に、亡骸を見てきたばかりだというのに、彼が死んだという実感がまだ伴わない。
哀惜の念に囚われそうになるたびに頭を振って、手紙が示す薬品棚や本棚を眺めてその所在を確認する]
……、これは…
[ふと目に留まったのは、古ぼけたフォトフレームだった。
ずっと以前、子供の頃にはあったこの写真立ては、いつの頃からか彼の部屋で見かけなくなっていたのを思い出す。
最近、これを再び取り出して置いたという事だろうか。
そこにあるのは、若かりし頃のサラス夫婦と、幼いサイラス少年の姿。
キャサリン王妃が存命中で、カルヴィン王子が生まれたばかりの頃だったと思う。この頃はまだ、サイラスの父親がこの店の主人だった。
明るい笑顔が三つ並んだ幸せな家族像。そんな彼らも今では三人共、冷たい墓の中だ…]
(251) 2011/11/17(Thu) 22時半頃