[そこに、3つ人影がありました。
 2つは、とても優しい微笑み。それを見ておじちゃんはほっと胸を撫で下ろしました。とりわけ赤い瞳が、いきいきとした表情でおじちゃんに手を振ります。黒くて長い髪が、風にたなびいていました。
 もう1つは、ここにおじちゃんを連れてきた女の人。
 
 女の人が言ったのは、他の人と同じことです。お菓子、奪われる、お化け、やっつける。
 残りの面影が、心配そうにふるふると首を横に振ります。気をつけて、って言ってるみたいです。
 『大丈夫、食べられやしねーよ。』
 おじちゃんは、そう答えました。奥さんと娘さんを、安心させるように。
 『食べられたら、おめー怒るだろ。』
 奥さんは頷きます。にっこりと、笑って。
 
 女の人はそれを見て、どんな顔をしていたでしょうか。いつの間にか消えてしまったかもしれません。必要なことは、…必要なこと以下のことも、話さず。]
 (238) 2011/10/21(Fri) 00時頃