[――カイロのじわりとした熱に、いつの間にか冷え切っていた薄赤い指先は、じわりと元の色を取り戻していった。
その合間に他愛ない話>>211を投げかけられれば、少しだけ表情を緩めて頷く。]
でも…火を通せば、そこそこ甘いと思います。
[――自分は生で充分甘いですけど。
そんな事を胸に浮かべれば、キャベツ…もとい葉野菜が、いつの間にか特別になっている事をぼんやりと自覚し。
込み上げる薄ら寒さを前に、まだ温かいカイロを固く握り締めるのだった。
……他愛ない話をどこか規則的な音の群れに挟み込むうちに、馴染みのアパート前に辿り着く。
そのまま深い謝罪と、どこかぎこちない感謝の言葉を連ねては、鹿角の当たらぬ範囲で一礼し、アパートの軒下へと走った。
やがて、ポケットに眠る、水気を含んだ手拭いの存在に気づいたのは、開いた我が家の扉に身を潜らせた後だったか。*]
(235) 2014/10/06(Mon) 01時半頃