[白薔薇がその場から離れるのを視線で追い、黒薔薇は血の跡の片付けを再開する。
[黒薔薇の鼓動は、いっそう激しさを増してゆく。
――『あなたは「いけない」のでしたね。』
その言葉に、白薔薇の優越感と選民的な思想が見え――或いは、単に黒薔薇がそう感じただけか――彼の胸に深い闇が渦巻いた。
肥え太らされている時間がもどかしい。何故、白薔薇が選ばれたのか。何故、まだ自分は飼い慣らされているだけなのか。
嫉妬、羨望、憎悪――…
彼らの仲間になりたいわけではない。元より自身が誰かを心から信頼する類の人間ではないことを、彼自身よく知っている。
――この「痛み」には、「悦楽」が伴わぬ。
そのことも、彼自身よく知っている。 ]
[奥歯をギリギリと噛み、白薔薇が通っていった場所を憎々しげに睨み付ける。だが、その歯は未だ、人間のそれのまま――**]
(231) 2010/06/23(Wed) 18時半頃