[この城が城として存在していた頃はサロンと呼ばれていただろう場所。
談話室と呼んで良いのかわからないけれど、共有部分として寛げる部屋のソファに腰かけた。
高級そうなそのソファは、以前ゴミ捨て場に捨てられていたものだ。
ゴミを拾う、という行為は吸血鬼としてどうなのかと少し思ったけれど、丁度この部屋にソファは欲しかった。
そして何より、ソファにたっぷりと染みた血痕を見て見ぬふりなどできなかった。
そのソファが捨てられた理由は、その血痕だろう。
何があったのかなどは興味はない。興味があるのはその染みだけだ。
染みた血を啜ることなどしないが、香りを楽しむくらいは許されるはずだ。
そう思い、許可も取らずに堂々と城に運び込んだのはいつだったか。
上からカバーをして染みは見えないけれど、香りはまだ十分楽しめる。]
とても良い香りですけれど、おなかが空いてしまうのですよね。
[うっとりとした顔で胸いっぱいに息を吸い、クッキーの袋を開けた。*]
(227) 2018/11/04(Sun) 01時頃