[あの時、彼から外される視線というのも新鮮だったが、今日のは特別に格別だ。
古い洗濯機の前に立つ彼>>206は、処理にエラーでも起こしたように固まっている。
本来であれば、これは望まぬ事態だ。
彼の瞳はあろうことか己に向けられ、
何度瞬きを繰り返しても逸らされる気配はない。
あの絵画と見つめ合っている時とも違う、
己に向けられた顔。自分だけの彼。きっと誰も知らない。
――身体の芯を駆け上がるものがあった。
マスクから返ってくる息が熱い。遮るものさえなければ、白い靄を吐き出してしまっていたかもしれない。
結局、今回もこちらが先に視線を外した。
だから、彼の格別が混乱のままでいる内に新しい道を塗り重ねる。
操り人形のように頷く様子に、喉の奥をくつくつと鳴らした。まだ残っていたざらつきを誤魔化すように、軽い咳払いを添えて。]
(224) 2021/02/17(Wed) 22時半頃