― 龍山の血族 ―
[龍山の家は天使の一人であるにもかかわらず、代々ヒトに術を分け与える事を喜びとしてきた。
それ故ヒトに近く、誰よりヒトの傍にあり、そして多くの愛や慈しみを知ってきた家でもある。
道場とは、強い術を教えるのが全てでは無い。
その流派の心の強さ、思いやり、伝わる全てを注ぎこみ、強めるのは見せかけでは無い、内面を支える本当の強さ。
優しき天使たる龍山の当主がそれを率いるのは、当然の事と言っても過言ではなかっただろう。
だがその優しさが、時には残酷な現実を産み出す事もある。
優しき一族はその優しさ故、記憶の消去>>2:185の道を選び、ヒトを傷つけぬように、己が傷つかぬように、いつの時代もその優しさは知る物を人知れず傷つけて行く。
生きて居る限り、傷つくことは避けられないのだと言わんばかりに。
世界を守るべき当主としての使命。今のヒトの世への強い執着。
だが、板挟みであり支え合うその二つが龍山の一族を更なる高みへと強めて行った。]
(223) 2015/09/17(Thu) 15時頃