[ “鬼”の気配を辿った先にいたのは、昨日会ったふたりの人間。]
あら、誰やと思うたら、ナツメさんどすかいな。
堪忍しとくれやす。降参て、うちもいきなり人を射ったりはしませんえ。何やナツメさんから、えろう“鬼”の気がしはりましてなあ。心当たり、ありません?
それから、ぱ……パパラッチさん……?
[ 昨日の記憶と自分の語彙を総動員した結果、派手に名前を間違えた気がしないでもない。
石について探っていたナツメには少しの信頼を置きつつ、底が知れないフードのパパラッチ(仮)には少しの疑惑を持ちつつ。
取り出した弓の先は、すっと、猫型の何かに向かう。]
その“猫又”はん、昨日は連れてませんどしたやろ?
いつ出会わはれはったん?
何が目的で、ナツメさんに近付いてはりますん?
見たところ、特に“鬼”に襲われはった様子もなさそうどすけど。
[ その言葉は流れるように柔らかいが、けっして温かいものではなかった。*]
(222) 2016/06/17(Fri) 14時半頃