―数年後 破壊の跡残らぬ街中で>>210―
[飛んできた折鶴に煙草の煙を吹きかけたりつまみ上げるまではしても、戯れに燃やしてしまう事はもう無く、
紙の翼>>213が擦れる音を耳元に聞きながら、不機嫌そうな青年は表情以外は当主である幸々戸の次男によく似て居て。]
お前は頭が元に戻ったな、長男。
[眩しく染めた金髪は長い時の中ですっかり黒髪に戻っており、ついでに言えば歳も取って大人になったなと、
しかし、後半の内容を口にする事は無かっただろう。
死体の様な青年を幸々戸の家に送り届けたのは、もう随分前の事。
…いや、様では無い。
それは確かに死体だった。
あの日、鼓動無き身体が徐々に冷えて行くのを己はどうしようもないほど感じていたし、
送り届けた玄関先で彼の血筋の者や当の次男が慌てふためくのを、己は確かに間近で見た。
次男による蘇生が施されるも、結局意識が戻らなかったのも、丁度あの日。]
(220) mzsn 2015/09/25(Fri) 01時半頃