─ 宝物庫 ─
[金銀財宝、調度品……他、お宝の類には、たいした興味はない。
しかしその中に、ひとつ、とある国の海軍の紋章が刻まれた金時計を見つけ、珍しく手に取った。]
[───海軍の男と初めて出会ったのは、何年前になるだろう。
あの時は、ヴェラはまた別な船にいた。
雇い主が、海軍の船に牙を剥いたから、当然ヴェラも、海軍と戦った。
味方(そも味方だとも思っていないが)が捕らえられ、殺されたところで、何の感慨もなく目前の海兵を屠る。
今と、何ら変わらぬ行動。
いつもなら、どの顔もすぐ忘れるところだが、その時は珍しく、海軍に、印象深い男がいた。
脳裏にしかと刻まれた、金髪の男。
絶望を冠した船の中、再会を果たした時、男の名は以前の己が知るものとは違っていた。
だからといって、それを誰かに言うことも、本人に訊ねることも、しない。*]
(215) 2014/12/08(Mon) 03時頃