ねえ、ところで。話は常々聞いているのだよ。
ギターの幽霊さんの話。
[校内は、放送室に仕掛けた、時間きっかりに流されたCDのメロディと、誰かの怒鳴り声、あるいは曲を知る誰かの声、あるいは…… とにかくとても、騒がしい。
かつて一緒にファンだった友人も、今は気遣ってそのバンドの名前を自分の前で出す事は無い。
学校にて、自分の前で、その名を出すのは。
彼らの死を悼んで、自分を詰る目的がある人間だけだった。
未だ自分が、ただの一ファンであることを知るのは、もう、学校でひとりきり。
さて、そのひとりは、ちゃんと卒業式に出たんだろうか?]
なーんであたしのトコには来ないかな。まったく、薄情モノ。
[ぃぃん。ピックを弾く。
本当は、同じのが欲しかったのだけど、見つからなくて。
代わりに店の隅で、まるで自分を待ってたんじゃないかって言うと、自惚れも良いとこな気がするけど、眠っていた真っ黒いギター。
見た目は少しゴツいけど、繊細で優しい音色を奏でてくれるそれは、やっぱり誰かに似ていた]
(213) sayclear 2010/08/15(Sun) 18時頃