[己の異質に気づいたのは、もう少し大人に近づいてからのことだ。
小学校の先生が結婚すると聞いて、好きになるのが遅すぎたと嘆いたことがある。
中学で一番人気の誰かより、隣のクラスの女の子とこっそり付き合っているクラスメイトが好きだった。
いつも恋する相手とタイミングが悪いのだと、友人に嘆いていた。
高校の時に好きだったのは女子バスケ部の先輩だ。友人の応援に駆り出された時に一目惚れした。同時に、その人が男子バスケ部のキャプテンに恋をしていることも分かった。見上げる瞳も、弾む声も、上気する頬も、相手だけに与えられるすべてがこの場の何より美しかったからだ。
それでも構わなかった。いつものことだ。友人の応援と称して体育館へ赴いては不自然にならない程度に隣へ視線をやり、後ろ姿を眺めていた。
頸の綺麗な人だった。体育館2階の窓から差し込んだ光が汗の滲む肌を照らす様を見るのが好きだった。キャプテンと話す度に特別とろける唇に胸が痛んだけれど、それでも十分幸せだったから、今以上のことを望むつもりはなかった。]
(210) 2021/02/15(Mon) 18時半頃