30 ─今夜、薔薇の木の下で。


【人】 会計士 ディーン

[ラルフの震える聲に応えようとして出来なかったのは、もう一人を気にしてのこと。
恋人――その単語に想うことはある。過去身体を交えた幾多には求められなかった、否、求めさせなかった関係。
視線は銀灰から水色へ、もう一人の言の葉を聴く。]

 サイラス、お前……―――

[サイラスの言い分に、怒りとも呆れとも違う声音。
ともすれば混ざり、けれどどちらにも一歩足りない。
頭痛を耐えるように、こめかみに手をあて己を制するようにグリグリと。]

 まぁ、確かに《壊し、壊されたい》という感情は
 サイラス以外には抱かない想いだろう――これから先もおそらく。

[ラルフには沸かない感情。
壊し、壊されるくらいならば、慈しみたい想いが強い。]

 それだけは、ラルフには与えられないものだな。

[いつかラルフも謂っていたこと。
人一人の全てを独占出来ないことを肯定する。]

(208) mitsurou 2010/09/14(Tue) 23時頃

← ↓ ■ □

ツール

クリップボード

ピックアップ

>>【】