―白薔薇の香る広間―
[茶器を置けばかすかな振動に、器を満たす濃紅色が揺らぐ。首をゆるく傾ぐ仕草に、その眼差しを和らげて]
いえ、本来この茶葉でしたら、
おすすめすべきは香りを生かす為にストレートなのです。
――ミルクは、ただ私がそれを好む、というだけですから、
おすすめをとのことでしたら、そのままで、どうぞ。
[問い返される言葉にふと過ぎる名、サイモン・トレイメインと言ったか。その者に心乱されたときの様子とも、また少し異なる彼女の姿。
少年の時分から傍らにあったが、不安の色も、曖昧な笑みも見慣れぬもの。――けれど、それが己に起因するかもしれぬことには、気づけない。だが、翡翠の双眸がひたを己を見詰める姿は、どこか悼ましくも思えて]
ご様子が、常と異なられるように感じまして、
―――……案じる程度は、お許し下さいますか。
[彼女と同じ言葉を紡げば、小さく微笑んだ**]
(207) 2010/06/22(Tue) 10時半頃