[ 二年間知らなかった姿の隣人が其処にいた。>>157
口元を隠し分かりづらくなる筈の表情が、いつもと違う圷文彦を確かに伝える。
何も言えないまま、瞼が忙しなく閉じて、開いて。
悪癖ではなく己の意図の範囲外で彼を見続けてしまった。
静寂のままに温度が届く。掴めないままに何かを垣間見る。
その時最愛の氷海は、脳裏から溶けて消えていた。
そんなこちらを他所に、相手には平熱が戻っていた。>>158
掛けられた声に、従順に親の言うことを聞く子供のように黙って一度頷く。
何も、言わなかった。
自分が望まないことを人にしてはいけない。
そんな常識ではなく、いつものように勝手な解釈をし関心を外したわけでもなく。
ただただ頭から答えを引き出せなかったからだ。
大田竜海は狭い視野で築いたマニュアルにより他者と触れ合う。 ]
(207) 2021/02/17(Wed) 21時頃