―孤児院のある日―
[帝都の中央を覆う空は鈍色。何れ来るだろうと思っていた雨雲は予想よりも早い。>>151]
あぁ……しずかに、降っているなぁ。
リッキィ。洗濯物仕舞うの、手伝ってくれる?
[頭に手を置き、軽く撫でて訊ねる。
首を振るような子ではないと思っていても、頷いて欲しくて。
文字はそれから、と文鎮で紙を留めた。]
きぼう……。リッキィは、何かお願い事があるかい?
『ねがい』を二つ重ねて『希望』ができる。ただ望むだけでは足りないんだよ、きっと。
[書き順を覚えられるように、紙と筆が立てる音は雨音よりも静か。書き終わると表情を緩ませ、リカルダが覚えるまで、何度でも何度でも『希望』の文字を書き綴る。
髪に残っていた雨粒がぽたり、1枚の紙に落ちて墨を滲ませた。
『きぼう』の漢字を書いた紙が部屋に散らされていく。**]
(207) 2014/02/08(Sat) 21時半頃