── 墓地 ──
[少しずつ芽吹いてきたまだ小さな雑草の芽をむしり、落ち葉を掃いてまわる。
まだ少し肌寒いので、以前ギリアンが街へ行った土産にと買って来てくれた白いストールを肩に羽織っている。
もう、10年も前の物だから、表面は毛羽立ってしまっているけれど、大事に手入れをしているので虫食い一つなく、色も買ったばかりと殆ど変わらぬ白を保っているのは少し自慢だった。
ふと、足音に気付いて目を開けると、背の高いがっしりとした体格の男と目があった。>>170]
…──やぁ、ホレーショー。
[目の前の男が、軍人であるという事への嫌悪はない。
ただこの場所で会った時だけは、軍人と言葉を交わす事を周りに立つ墓石に責め立てられているような錯覚に陥って、月白の瞳が憂いを帯びてしまうのは、村で会った時の女の様子を知るホレーショーならば仕方のない事とわかってくれるだろう。
彼が村に来て数カ月。長い付き合いとは言えないが、ギリアンとの生活に慣れた女にとっては、歳もそう離れていない目の前の軍人と話す時間は嫌いではなく、気分が沈んだ時などはダーラの店で酒を呑み交わし、元気を貰って帰る事も少なくなかったから。]
(204) 2012/03/25(Sun) 15時頃