[自分が彼女になぜ心奪われたか、といえば、ただひたすら顔がめちゃくちゃ好みだった。
極力他人と関わりたくない自分が、誰かを好きになる入口などそれしかない。
けれどそれからこっそりと会話を立ち聞き、仕事も出来れば面倒見もいいらしいことを知って。
ますます好きになった。
正面から向き合うことなど絶対にできないから、たまに賀東荘で姿を見かけてはこそこそと物陰に隠れてその挙動を視線で追う日々。
彼女は常に堂々と振る舞い、ハキハキとしていた。
きっと誰からも好かれているだろう完璧な美女。
……まるで自分とは正反対だ。
何故人は己と真逆の性質のものに惹かれてしまうんだろう。
ああなれたらいいのに、という願いを寄せているのだろうか。
何にせよ、自分にとって彼女は高嶺の花だった。
見上げれば目も眩むような、好意を寄せることすら烏滸がましいような、高嶺すぎる花。]
(203) 2021/02/15(Mon) 17時半頃