[それは、あの日と少し似ていた。手を差し出し、それが取られる瞬間>>1:11に。
止まったその手>>165、微かに感じ取れる鹿角への視線。その辺りは想定通りだと、唇の先から細い息だけが漏れる。]
(――あまり驚かないんだね。…皆そうだったけど)
[第一声>>166への感想は、その程度。と胸の中で、他人事のように締めくくる。込み上げる熱は収まりも、溢れもせず。なみなみと注がれたコップのようだった。
…訪れてしまう想定通りの沈黙に、地を、布が擦る音が乗る。
呼びたい名は、喉奥で止まっていた。口にした拍子に、立ち去られないか、他の物が零れてしまわないか、ありきたりの心配ばかりが脳裏を駆けて。囁く。]
(ほら、――逃げる? 追いかけも、襲いもしないよ)
[それは、どちらへ向けた言葉だったか。
知らず知らず重なろうとしていた、静かに零れる互いの息の音が、喉の締まる高い音と圧に混ざって、不規則な音へと戻る。*]
(202) 2014/10/08(Wed) 03時頃