―雨降る森の中で―
[狼は、後ろ足を引きずりながら、村への道のりを歩いて行く。
軋む身体で、なんてザマだと、自嘲しながら、
ヴェスパタインからの通信があったからといい、濡れるのをさけ一般の人間を連れて来たばかりに。
その人物を死なせ、討伐すべき魔物を増やし、おまけに体はこのざまだ。
背骨が軋み、声も出ず。足は痺れて……。
いや、すでに折れてしまっているかもしれない。
仮にそうだとしたら……三つ足の狼は、走れない。
いかんな。一つの供物に固執しすぎて、適当なタイミングで『瀕死に至る自傷』をする手段も、持ち合わせていなかったな。
そんな思考が、頭の片隅に過る。
その時、前方に見えた人影>>191。緑色のローブ。
ここにこれ以上の一般の人間がいるとは、思えない。
さらば、あの人物も群の仲間か、と、軋む体を突き動かした]
(197) 2013/06/12(Wed) 23時半頃