[幼い頃から消極的な性分だった。昼休みは校庭や体育館で駆け回るよりかは、教室に残って絵を描く方が好きだった。コミュ力は乏しかったけれども、小学校時代、自分の周りには常に誰かが居た――…ヒーローだったのだ。
数分間しか地球に来る事が出来ない巨人。悪の秘密結社に改造されたオートレーサー。少年達の憧れが己のノートには詰まっていたのだ。
”漫画家みたい。”誰がそんな事を言い始めただろうか。いつの間にか、それが己の夢になったいたなんて。
やがて中学生になり。高校生になり。己の机に人が寄り付かなくなっても描き続けた。]
[卒業式を迎える数日前の昼休み。喧噪を遠巻きに聞きながら。
その日はノートでは無く、色紙を前にペンを握り締めていた。
色紙がずっと残るとも限らないけれども。色として、遺れば良いのだ。
己に言葉は紡げない。――…だから、代わりに捧げる、]
[彼が織りなす花々に負けないくらいに――…美しい花を。]
[主が離れても寂しくないようにと――…可愛らしい白兎を。]
[眩く麗しい姫には――…太陽が昇っても消えない星を。]
[そして、異国の地でも繋がる世界――…正方形に広がる蒼穹。]
(196) 2014/03/06(Thu) 21時半頃