[選んだシーンは3つ。
参加メンバーそれぞれがメインになれる場面を選んだ。
その中のひとつに、恋敵の情熱的な口説き文句>>79――の後、ヒロインが主人公の元へ戻ろうとするところで、恋敵がその腕を取り、引き止めるシーンがある。
恋敵はただ愛を重ねた。想いを言葉の形にして、彼女の前に惜しげもなく差し出してみせた。
しかし彼女は首を横に振り、こう言うのだ。
『さようなら』
[彼女は恋を語らない。しかし、何度距離が離れても、最後は必ず主人公の元へと帰っていく。
人形のようだと思う。節々に括りつけられた糸が、内へ内へと手繰り寄せられているかのような。執筆を重ねても、どこか他人事であるような感覚は消えたことがない。
仕事である以上、当然手を抜くような真似はしない。しかし男の文字には熱がなかった。きっとあの別れの言葉に指で触れたら、全身が氷ってしまいそうだと思っている。]
(195) 2021/02/17(Wed) 21時頃