― 孤児院でのはなし ―
[サミュエルが孤児院に入ったのは、いわゆる浮浪児狩り対策を国がうったときの話だ。
減る人口、そして、子どもは吸血鬼にとっても好物である。
だから、子ども対策に乗り出し、いわゆる浮浪児や、犯罪を犯す子どももきちんと矯正しようというものである。
もちろん、これは素晴らしい政策だともてはやされたが、実際、浮浪児の中で広まった噂は、何かしらの実験台にさせられるぞ、というものだった。
それが嘘か否か、ともかく、捕まったあと、孤児院に入れられたが、そこでの生活は非常に人間的なもので、
サミュエル自身、その穏やかさに最初は呆然としたものだ。
やがて、希望をいえば小さな畑をすることも許された。
そこで、野菜をほそぼそと作り始めると、他の子も寄ってきた。
話をするのは、やはり身の上話が多くなる。
びっくりしたのは、大半の子の悲惨な過去で、
サミュエルは、思う。ここで、自分はとても幸せなほうなのだと]
(194) 2014/02/08(Sat) 19時半頃