[珊瑚のような真っ赤な髪をひとつに束ね波打って背中を滑り降りる
艶やかな紅を差した口を尖らせて、切れ長の目を細める
黒に派手な大輪の柄のお引きずりを着流して
花魁のように肩からずり落ちそうなくらい落としはだけた胸元
その細い白い手が、たまこの頬まで伸びて、ぺちんと軽く音を立てた]
『あたしは、揚羽という。
今日で齢100歳、満月の次の日、逢魔が時。よい機が重なったというもの。
この美麗な姿をごらん。
特別大切に扱われた高貴な古い古い品は、妖になる。
こうしてあたしはとうとう九十九神になれたというわけさ』
『おや』
[揚羽と名乗る九十九神は、頬に触れた手をそのままにふと動きを止める]
『ふぅむ。たまこ、お前は10年間あたしを大事に大事に磨いてくれたね。
どうやらそのせいか、ほんの少しあたしの霊力が移ったようだよ。
まぁ、あたしも新米であることだし、そんなにたいした力はないが』
(190) 2011/09/14(Wed) 02時半頃