――……、
[――茶化す意図を持った己の言葉に、余裕を持って笑いを落とされれば、居心地が悪くなる。
今はアンタに、と呟いた彼が手を取る力の強さにこちらを見やった。切れ長の瞳が吃驚に丸くなるのを、引く腕のままに確認しつつ。
高い声が上がり、鼻筋通ったその顔が間近に歪めば、知らず子供らしい笑みが浮かぶ。
それでも相手が口元に笑みを見せるのには、小さく眉を動かした。]
こっちこそよろしく。ヨハン、さん。
[ 何度か口内で繰り返してから名前を呼ぶ。様、と自身の名前に付けられた揶揄にはただ知らない振りをして、覚えの悪い脳細胞に綴りを教え込んだ。
ただいくら自覚しているからといって、彼の顔は今後忘れそうもなかったけれど。
衝動のままに引き寄せた相手の頬に赤みが差せば、自業は棚に上げて身体を引き離す。]
……大きいたらしに言われたくないね。
[ 拗ねた口調に気付くことなく、熱が顔へと昇ってないことを願いながら、余裕も無いままそれだけ返した。
……握った手に引かれるまま街を進み、やがて看板の前に立てば、純粋な嫌味や揶揄いであろう>>150 問いが隣から掛かる。]
(190) 2014/10/01(Wed) 23時半頃