―――…、[何事かと、結論を出すより先。耳に届く言葉が徐々に脳髄へと浸透する。眼球の上を裂いた傷からは、未だ緋色が溢れて床へと滴ったままだったが其れを不快に感じる程、其れに意識を向ける余裕は無かった。外される拘束。左目をゆるりと、瞬いて。右掌でそうと顔を覆う。ぬるりと生温かい緋色が移りしかし其れが視界に入る事はない。痛みで瞼が開かない…事もあるが、恐らく水晶体まで至っただろう事が随分冷静に判断出来た。――しかし失った筈の其れすら些細な事に感じる のは、薄く口唇を開き、吐息を一つ飲み込んだ。…居場所を、望む訳では無い。 生にしがみ付きたい訳でも、無いが。]
(187) kairi 2011/04/04(Mon) 23時半頃