[手当てを終え、返り血を浴びた服を着替えると、白薔薇の部屋に続く扉を開いた。]
……白薔薇、入りますよ。[3度、扉をノックする。]
先程、私は旦那様に仕事を申し付けられましてね。手伝って欲しいというわけではありませんが、旦那様とお嬢様の護衛を……
[と、部屋の中を覗き見る。そこには、唇よ寄せる男女の姿があり、その周囲にはえもいわれぬ程に薫る薔薇の瘴気が広がっていた。]
………成る、程。成る程。よく分かりました。そういうことなのですね。
[喉を鳴らして小声で笑う男は、その様子をまじまじと見つめる。]
堕ちた天使とはよく言ったものです。私は神など見たことはありませぬが、天使たらいうものは今この場で初めて拝見致しましたよ。
「なんとも神々しいお姿だ」。
いいえ、天使様のお手を煩わせる訳には参りません。「従者は私ひとりになった」。その事実は、今ここにありましょう。
それでは、お嬢様、「白薔薇様」。ご機嫌うるわしゅう。
[くつくつと笑って一礼すると、黒薔薇はその場を後にした**]
(185) 2010/06/23(Wed) 07時半頃