― 現在:本屋内 ―
[――赤ずきんへと返り咲いたらしい狼へ、メールを送信する。
改めて文章にした現状に、自然と丸まり出す肩からずるりと鞄が滑り落ち、階段をがたり、と打ち鳴らした。
その拍子に、鞄の外ポケットに差し込んでいたボールペンが軽い音を立てて、下へ下へと転がって行く。その姿を見届けては、唸りに似た溜息を零し。やれやれと、重い足を浮かした。
そろそろだろうか、と呼び寄せた相手を思考の隅に浮かべながら。]
(…――無駄な不法侵入を重ねただけのような)
[蹄を静かに立てながら一階へと戻ると、落し物に手を伸ばそうと腰を落とし。手を握り締めた、その時。
チリ、というカウベルの微かな音と共に、鍵の見つからなかった扉が動きだした。
静かに開かれた空間から、細い影が静かに店内へと伸びて。咄嗟に、その様子を視線が追いかけた。]
(184) 2014/10/10(Fri) 23時頃