―ある昼下がりのこと―
[特にこちらから呼んだ訳では無く、わざわざ呼ぼうとも思わなかったフェルゼ>>77が、何故かマークの名を呼んだ。
色づいた花弁に触れるものへの恍惚にも似た心地は、厄介なことになったという思いへと取って代わられた。そう思いながらも、結局すぐに逃げたりなんだりはしなかったのだが]
……僕が、花みたい?
[未だまどろみの残った調子で、言われたことをそのまま繰り返した。繰り返して
そして、「似合って」いるとまで、言われた。>>78
この時のマークはもう、自分が女の子の可憐な服を着るにふさわしくないと、自覚していた時だった。]
違う。
僕は、そんなんじゃない。僕には、似合わない。
[顔は引き攣っていて、漸く出せた低い声は、震えていた。
そしてこの時ばかりはすっくと立ち上がり、フェルゼに言い捨てて逃げる形で、中庭から出て行ってしまった。]
(177) 2018/05/15(Tue) 23時頃