『結構肝っ玉据わってる感じがするし』
『今のままで充分、君は若くて綺麗だよ』
『中紙の硬いやつもあるから、指や爪が傷んではと』
『スッチーさんとか好きだぞ、わりと』
[襖の薄暗闇の中に入り込めば、今迄もらった言葉がくるくると頭の中や胸のうちを回り出す。直近の言葉から、始めての授業で告げた自己紹介の一部まで。
ストーカーみたいだと自嘲しながら、けれど抱えた膝の上に頬を乗せて]
(貴方は、知らないだろうけど、いまになってわかったけれど。私、貴方に一目惚れしてたのよ、錠)
[死に絶えた乙女心がこんなところに見つかってくすぐったいような、嬉しいような気持ちに、小さく笑う。同時にぱたりと尻尾が一つ振られたか]
『半獣は時をどう経ていくんだろうな』
[思い出している中で一つの言葉が気にとまり、一つの問答を思い出す。
自分が質問し、掲示板の誰かが答えてくれたもの。
曰く、獣人は外に出られない。
それを聞いた瞬間の、視界が闇に覆われるかのような感覚は触れられるほどに生々しく。それでも一つの可能性を思いつき尋ねたのは、繋がった夜の夜半も過ぎた頃だったか]
(173) 2014/10/08(Wed) 00時頃