─ 図書館 ─
[頬杖をついて、レシピ本を眺める。なるほど、冷しゃぶくらいなら俺にも作れるかもしれない。他にもいくつか。いつか家を出て一人暮らしをした時にこういう知識が役に立つかもしれない。ぼんやりと『そんな日は来るのだろうか』と思う。俺が家を出る日が、という意味で。そして次に『明日が来るかわからないのだ』ということを思い出す。
目を開いているのに、本を眺めているのに、そのページの情報が一つも視界に入らなくなった。
このままだと、俺は一生あの家に居続けなきゃいけないのか。]
…………
[ふと、読んでいる本の下に紙片を置く白い棒が数本見えた。(>>148)いや、人間の指だ。顔を上げるとそこには安住先輩が居て、そのまま視線を定めると目が合いそうな気がしたからまた視線を紙片に落とした。メモを手にとって開くまでに、安住先輩は離れた席に移動していた。知っている人間の気配と、距離感にほっとする。
安住先輩とはほとんど話したことはないけど、こういうタイプの"よくわからない人"は居てくれると少し、安心する。]
(172) 2019/09/05(Thu) 14時頃