[ ――雨が降り込む前に建物へと寄れば、静かに相手の腕から手を離す。戸惑いつつ礼を言われるのには柔く首を振った。道に染み入っていく粒を凪いだ視界に入れつつ、隣立つだろう彼女の問い>>159が耳に入れば。
暗灰色を静かにそこへと移し、どうかなと軽く呟いた。家族、の言葉には雲翳の落ちかかる表情から殊更色を落とす。しかしそれも一瞬であれば、相手には悟られなかっただろうが。]
……クラリスに逃げられたら傷つくよ、多分ね。
クラリスが獣人なら、どうされたいの?
[ 軽薄じみて告げたそれを、相手にはどう取られたのだったか。
死ぬまで、と最後の選択肢を心中で反芻すれば、
――微かにただ頬を緩めて。僅かに濡れたシャツを軽く払い、次いで問いを投げかけただろう。
――やがて雨の勢いが強くなる頃には、先ほどを思い出し待ち合わせの件を告げ。
“獣人以外の情報交換”について、彼女に尋ねかけたかもしれない。]
(172) 2014/10/05(Sun) 22時半頃