― 夢の中、更に、場面変わって ―
「その女は駄目だ」
[どうして、と叫ぶ自分の姿は今よりももっと大人にも思うし、今と似たような姿にも思う。隣に立っているのは―――ああ、まぎれもなく、彼女だ。お互いの右手、薬指に同じデザインのリングが嵌っていた。夢だと解っているのに、少し嬉しく思うところだったのかもしれないが、それよりも。
婚姻が自由とされるこの家で、相手を否定されるのは信じられなかった。
――― それどころか、]
「傍にいるのも許可できない」
「もっと早くに気付いていれば」
「その女の力は、血を脅かす――…!」>>1>>2
[隣で小さく上がる悲鳴、彼女を排除にかかってきたのだと気付くと、自分の中の何かがぷっつりと音をたてたのが解った。
それは、堪忍袋とかではなくって、今まで信頼していたものが、なくなった音だ。
考えるより先に狼の姿で彼女を守り、そのまま攫って――― もうこの家に、戻る事もないのだろうと……。]
(170) 2018/03/31(Sat) 13時頃