瑛美さん。
[千秋は瑛美に向き直った。
梶が言うネットアイドルだとか、どうだとか、それもきっと彼女がここに居る理由の一端なのだろう。彼女がどうでも良くなったという日常の、結果の一つなのだろう。
けれど。
警戒した表情、ほのかな笑い、こらえきれなかったらしい涙。いくつかの表情を見たけれど、瑛美が怒りの感情を見せるのは、いつも誰かのためであったように思う。梶に言わせれば、それすらも他人のために怒る自分のため、ということになるのかもしれないが。
しかし日向のことを思ってここに残ると言った瑛美の言葉は。日向と一緒に帰りたかったと言ったその言葉は。どこまでも欲張りで優しいその言葉こそは、千秋が格好いいと思った、瑛美の姿だ。
だから、これだけは伝えなければならない。
それこそ、言わなかったら間違いなく後悔する。]
残られたら、困ります。
……僕は、向こうの世界でも、あなたに会いたい。
だから、ええと、その、帰りましょう。一緒に。
[口に出して、出した次の瞬間には後悔した。やっぱりそうだ、何を選んだって後悔するのだ。
これまで感じたことが無いくらい、顔が赤く熱くなっていく事を自覚した。]
(169) busoa 2015/02/13(Fri) 22時半頃